1. 難病情報誌 アンビシャス 131号

難病情報誌 アンビシャス 131号

最終更新日:2013年04月01日

 

表紙は語る

二人三脚の闘病生活 友の会に支えられ

又吉 忠常(またよし ただつね)さん
若年性パーキンソン病

 「肩が痛い」「腰が痛い」と訴え、左肩が下がり、足を引きずって歩く。私の異変に気づいた妻に泣きつかれ渋々行った病院。何軒病院を回ったことだろう、その度にMRI,CTを撮っても異常なし、その結果にひと安心するものの、一向に症状は変わらなかった。そればかりか体も硬くなり、どんどん悪くなっていった。どの病院に行っても異常なしと診断されそれを得意げに妻に話した覚えがある。
 30代の発症で病名が付いたのが47歳の時でした。病名が、難病の「若年性パーキンソン病」だった。病名を告げられた私の脳裏に浮かんだのは一世を風靡したボクシングのヘビー級チャンピオンだったモハメッド・アリ選手の聖火台に立ち着火する姿でした。震える体にヨロヨロでおぼつかない足元、それが自分の行く末を見ているようで今でもその時の事を鮮明に覚えています。
私が、出口の見えない迷路をさまよっている時に、妻は全国パーキンソン病友の会・沖縄支部という団体があることを調べ、その団体が開催する医療講演会へ参加するための受け付けもすましていました。
 医療講演会の内容はいきなりDBS(脳深部刺激法)の手術の事でした。
 パーキンソン病の事が何もわからない私にとって頭に電極を入れるこんな怖い手術をしなければならないものなのか只々不安になっただけでした。後で調べたのですが、脳深部刺激法(DBS)といい刺激発生器(パルス発生器)電極(リード)、延長用電極(エクステンション)の三つの装置を頭に埋め込む手術でこの装置から発する電気信号で体を動かすもので、パーキンソン病の多くの症状を改善するそうですが、手術には危険も伴います。しかもまだまだ事例は少ない方だと思います。しかしながらこの手術も進行を2~3年遅らせるだけで完治するものではありません。初めての講演会の内容がDBSについて語られたのでとてもショックでした。

 私にとって講演会よりもむしろ講演会終了後の帰りの廊下で声を掛け励ましてくれた上原秀保副支部長との出会いが私たち夫婦を変えてくれました。パーキンソン病で悩んでいるのは、私達だけではない。一緒に共有できる仲間がいる安心感が得られました。この時から友の会・沖縄県支部と私たちの関わりが始まりました。
 これまで事務所もなくファーストフード店等で相談事を受けていましたが、2009年8月より沖縄県総合福祉センターに事務所を構えたことで大きく変わりました。実現が難しかった医療講演会の案内やチラシ作りをするパソコン等の什器類を助成金で購入、会報誌“みのり”の製本も事務所で行えるようになり、会員同士の集まりも気軽に行えるようになりました。
 夫婦で友の会の役員として活動し、良い出会いがたくさんあった。毎月一回の交流会も楽しみにしている。講演会会場は那覇市だけにとどまらず読谷村や名護市など広範囲、那覇市から大型バスを借りて出掛けている。難病患者だからと引きこもっていない!少しでも多くの方々を外に出したいとの思いで活動しています。
 自分の生活は職業訓練校に通い、いろんな資格を取りましたが、障害者枠ですら現実は厳しく今でも仕事はありません。
 半年前から急に症状が悪くなりました。 まさかまさかの入院生活が3ヶ月にも及ぶ長期になろうとは、県内では薬の調整と並行してリハビリも行う入院ができる病院がなく、京都府の宇多野病院まで行きました。行きの飛行機でも搭乗する際から車いすを使用することになろうとは思ってもみませんでした。県内は神経内科医の先生方が少ない。先生方には診察に時間をかけられないもどかしさもあるのではないだろうか。宇多野病院では四階フロアが全室パーキンソン病棟で同じ病を持った者同士なので励まし合い、声を掛け合って治療に専念することができました。病院では薬の調整を行いながら理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるリハビリも充実した内容でした。その前にいろいろな検査を行って、その結果に基づいて計画を立てて治療に入っていきました。薬の調整は事前に薬剤師により薬の効用と副作用の詳しい説明がありました。薬の調整がある度に・・・。
 京都での入院生活はまだまだこれからでしたが生活のために退院しました。

 当事者として、患者のみならず家族も含めケアできる自分になりたい。そして一人でも多くの方が入会し前向きな人生を送って欲しい2月12日に北部へのバスツアーに55人で行ってきました。なんとすごいことだろう!難病を抱えながらも引きこもらない、名ガイドさんのパフォーマンスに大笑いしながら楽しいひとときを過ごし、おいしい食事をいただきながらの交流会。歌あり駄じゃれあり、涙あり、同じ仲間同士だから分かり合えるひととき。初めて参加して苦しい思いを吐き出し最後には笑顔、なんと素晴らしいことだろう、来年も企画しての多数の声に役員一同感謝、感謝。

語者プロフィール

又吉 忠常(またよし ただつね)さん
生年月日:1956年10月25日 生まれ
出身地:久米島町(旧仲里村字真謝)
趣味:釣り、パソコンでの会報誌作り
*パーキンソン友の会の会報誌「みのり」の制作・編集担当者として、趣味を活かし貢献

  • リハビリの様子

  • 先月の北部バスツアー

4月の報告あれこれ

世界希少・難治性疾患の日


 Rare Disease Day(世界希少・難治性疾患の日)はより良い診断や治療による難病患者さんの生活の質(QOL)向上を目指して、2008年スウェーデンで始まった活動です。
 アンビシャスもその趣旨に賛同し昨年より参加、今年は県庁ロビーを会場に実施しました。
 当日はパネル展と当事者を対象としたメンタル・福祉制度の相談会、東京・三重・佐賀と沖縄の4箇所をスカイプでお互いの会場紹介等の内容で実施しました。また初の試みの相談会は制限時間いっぱい相談者が訪れ、相談を受けた方からは高評価をいただきました。

膠原病医療相談会

 主治医の説明に納得がいかない、もっと詳しい話が聞きたいなどを専門の医師に第二の意見として聞くことを、セカンドオピニオンといいます。主治医に聞ければ良いのですが、なかなか業務内だと難しいようです。そこで、アンビシャスでは専門医のご協力を得て膠原病の相談会を首里城下町クリニック比嘉啓先生をお招きし実施しました。相談に来られた方の顔は始まる前緊張しているのですが、先生の意見を聞いてホット納得された顔をされています。

宮古地区クローン病・潰瘍性大腸炎の集い

昨年末に同疾患の講演会を琉球大学の金城福則先生が実施した後に、今後は定期的に交流したいとの要望もあり、今回希望者が集まりました。当面は2ヶ月毎に保健所を借りて集まろうと決まりました。集まりの名称をどうするかは、次回の宿題になりました。難病の制度面についても判らない事が多いので、その情報交換の場にしたいと抱負を述べていました。

在宅難病療養者連携会議

北部と中部保健所の連携会議に参加させて頂きました。医師や看護師、ケアマネージャー等医療関係者と消防や市町村なども加わる会議です。今年度は台風が大きかったので、その対応をどうしたのか、この課題は何なのか、今後はどうした方が良いのかを話し合いました。暴風域に入ると職員も動けなくなるので、事前の対応を求められるが、想定が甘く準備をしていないケースも多く、今後は各家庭でも十分な準備が求められている。

お役立ち情報

こころの現場から「『わかった気…』には注意」

鎌田依里

臨床心理士 鎌田 依里(かまだ えり)

人は、わからない状態では不安なので、何かはっきりと名前がつくと、それですべてが「わかった気」になることがあります。

会話で、たとえばSLEと聞くと、同じ病いを抱えている場合、相手のことがわかった気になることがあります。また、難病支援をしていると、難病の名前を聴くことで、ある程度、相手がどのような状態であるか推察することができるので、相手のことをわかった気になることが多いです。わかった気になることには、相手との距離を縮め、心理的に親密になれるような良い効果があるように見えるので注意が必要です。

同じ病いを抱えて生きていても、病状・障がいの程度、感じ方・生き方はそれぞれ違います。たしかに、病いを抱えて生きていると、生活に支障がでるので、病いは人生において切っても切り離せないものです。しかし、患者である前に、私たちはひとりの人間です。朝起きて、食事、排泄、勉強したり仕事をしたり、映画を観たり温泉に入ったり、綺麗な景色に感動し、友と語らい、愛を育み、夢をみます。それぞれの人が、誰かの子どもであり、友であり、恋人であり、親であり、師なのです…。

ピアカウンセリングにおいて、「わかった気になる」ことは、思わぬ落とし穴にはまることなのです。時には、言わなくてもわかってもらえることがあるかもしれませんが、みな人間。自分のことは伝えないとわからないものです。わかってもらいたい相手にはきちんと伝え、また聴くときには、相手のもつ色々なことに興味をもって聴いてみましょうね。時には、自分はこのように理解しているんだと相手に伝え返してみましょう。そうすると全人格をみながら聴くことができるようになるかもしれませんよ。

ヒトツナギの志

照喜名通

著:照喜名通

冒険とは、「日常とかけ離れた状況の中で、なんらかの目的のために危険に満ちた体験の中に身を置くことである」ウィキペディア より引用とある。
難病を抱える人は病を患い命の危険を体験するのであるが、自ら進んで危険に飛び込むのではなく、どんなにもがきあがいても避けることは出来ません。また、要らぬトラブルが起きないように保険にも入るし備えることはもっと大切ですし、同じ過ちを犯さないように学ぶことも大切です。しかし、どうせ避けることが出来なければ受け入れることで心も楽になるので、付き合っていこうと受容するのです。生まれた時から試練の連続で災いは無いのが良いのですが、この試練が少ないと、いざ災いが起きた時に乗り越える力も弱いのです。ならば、試練は多い方が良い。苦労は買ってでもしなさいの諺でもあるように、避けるのでは無く、自ら進んでいくことで更に強くなると思う。さぁ、どんな苦労がやってくるのか楽しみである。

特集 難病患者のためのコミュニケーションについて

著:NPO法人ICT救助隊 今井啓二・仁科恵美子

ローテクコミュニケーション技法

透明文字盤

ALSのような進行性の難病患者さんは、会話による意思疎通が図りづらくなることが、療養生活の大きな問題になります。しかし、以下にあげるような、残っている運動機能を使い、様々な工夫をしていくことによってまわりの人たちと豊かなコミュニケーションの世界を作っている患者さんがたくさんいらっしゃいます。
次回からこれらのコミュニケーションの方法を少し詳しく説明していきます。

非エイドコミュニケーション技法
 道具を使わないコミュニケーションの技法
 ジェスチャー、目や唇の動きやわずかな発声を読み取る、口パク、空書 、YES/NO

ローテクコミュニケーション技法
 簡単な道具を使ったコミュニケーションの技法
 筆談、文字盤、透明文字盤、コミュニケーションボードなど

ハイテクコミュニケーション技法
 電子機器を使ったコミュニケーションの技法
 携帯用会話補助装置:ペチャラ、トーキングエイドfor iPad、レッツチャット
 意志伝達装置:伝の心 など パソコン入力支援ソフトウェア:オペレートナビTT、HaertyLadder など

導入のポイント

 口文字や透明文字盤は日常的な会話として使われることが多く、話言葉になります。伝の心などの機器を使うと、文字を残していけるため、書き言葉になります。
 使い方も、使う場面も異なりますので、手段にこだわらず、色々な方法を使い分け、その人が現在もつすべての能力を活用してコミュニケーションの成立を目指していきます。

導入時期について

 ALSのような進行性の場合、進行の速度にもよりますが、早い時期に導入できれば、練習できる余裕もあり機器に慣れることができます。
 しかしながら、ALSと宣告された時に患者さんがいだくであろう絶望感を考えると、コミュニケーションが取りづらくなるから今のうちに練習しておきましょうと安易にすすめられるものではありません。患者さんの性格やその時の気持ちによっては、無理に進めると拒否反応をおこすこともあります。
 患者さんは何度も何十回も今までできたことができなくなるたびに、それを受け入れ、あるいは受け入れられないまでも折り合いをつけその変化に対応しながら生きていきます。変化に対応していく患者さんに対し、いつでも必要な時に必要な支援ができるように、支援者はいつでも、いつまでも患者さんの気持ちに向き合い、寄り添ってほしいと思います。

アンビシャス・メモ

~エッセイ~ 「真珠」 諸喜田 美智代さん(ALS)

胃の中になにか入れると胸が苦しくなるので、検査入院した。
心臓のエコーなど色々な検査を受けた。そのなかに胃カメラの検査もあった。機械を病室に持ち込んで検査が行われた。

皆さんは自分の胃のなかを見たことがありますか?普通は鎮静剤を注射して眠ったまま終わってしまうものだ。私は神経が高ぶって寝ることができず、目の前に映し出される自分の胃のなかをまばたきもせず見つめていた。すると約2センチくらいの丸い物が胃の壁からぶら下がっているのが見えた。先生は何も言わなかった。なんだろう?
それはカメラのライトを受けてキラキラと光っていた。まるで真珠のように見えた。
わかった!あれは胃ろうが抜けないようにしている水の入ったバルーンだ。
私の命を繋ぐ真珠より大切なものだ。バルーンが真珠みたいに見えるように思えるという事は、まだ頑張れる力が残っているということかも。でも体のキツさは良くならず、かえって悪化するばかりだ。笑顔が消え、眉間のシワが更に深くなった。お見舞いに来てくれた友達の皆さん、笑顔が見せられなくてごめんなさい。
早く良くなって本物の真珠を身につけて出かけたいものだ。

各患者団体からのおたより

「全国パーキンソン病友の会・沖縄県支部」より

会員募集
大型バスを貸切ってのツアー、勉強になった講演会、2月は充実した月でしたね!
楽しみな交流会が待っています。

交流会のお知らせ
4月28日(日)・那覇市保健所(3階)・13時~16時
5月26日(日)・那覇市保健所(3階)・13時~16時
6月30日(日)・第12回総会 *詳細は問合せ下さい

*那覇市保健所 → 旧中央保健所
連絡先:事務局長 又吉(090-8294-1974)まで

読者の声(READER'S VOICE)

◆130号を読んで。
「表紙は語る」石川さんのワイルドでカッコイイ姿からは想像がつかない程の、壮絶な発症の経緯を知り息をのみました。
しかし、ご自身の病気と向き合いつつ、外国の子どもたちの生活にも温かいまなざしを向けて支援をなさっている。
その支援は、同情ではなく子どもたちの自立へのステップを応援しているものだと感じました。
生きがいは自ら立ち上がっていく者に備わるものだと思います。
さあ、春。さまざまな旅立ちがあることでしょう。私も力強く歩んでいくぞ

〈ジュウミー(特発性拡張型心筋症)〉

アンビシャス広場

心の雑学

普通は3秒に1回といわれるまばたき。
このまばたきの回数は気持ちの状態を表すともいわれています。
緊張や不安を感じると人は自然にまばたきの回数が増えるらしいのです。
気持ちを落ち着けたい時は、ゆっくり目を閉じて深呼吸し、リラックスするのもいいかも知れませんね。

★ A.H

ポエム

「心の変化」

恋は、下に心(下心)があるし
ドキドキを求めるものかも

でも、愛は、真ん中に心がある

だから、
異性だけじゃなく
パートナーや親子、兄弟、友達、ペット…
愛着あるモノにも
愛情という深い気持ちが
生まれ、安心感を求めるのかな

竹村 安津季

お勧め映画情報

「接吻」/2008年 日本作
 家族とも疎遠に生きている孤独なOLが、テレビに映った一家惨殺事件の犯人を好きになってしまったというラヴストーリー、サスペンス映画です。
小池栄子さんの、恋の成就に身を捧げる演技にぐいぐいひきこまれていきます!
この一途な心に触れるにつれ、冷酷だった犯人にも徐々に悔悛の情が芽生えてくるのですが…。
タイトルの意味は最後まで観ないと分かりませんよ。

★M.A(拡張型心筋症)

クロスワードパズル

マス目を文字で埋めてクロスをつないでみてください。
最後にA~Fをつないで答えを出してください。
ヒント:四月は新しく始まる月ですネ。

タテのカギ
1.流行先取り、センスの良い○○○○な人。
2.平地より小高くなっている高台のこと。
3.結婚している女性を英語で?
4.ビタミン豊富で赤い小粒な果物。
5.企業などの会計を行う。「公認○○○○○」
6.豚肉のフライを何という?
8.兼六園、金沢といえば何県?
9.窓から見える美しい○○○を眺める。
10.クジラと同じく水中に生息する哺乳類。
11.外出時、足に履くのは?

ヨコのカギ 1.嘘つきな「○○○○少年」。
4.車道の信号は○○・青・黄色。
6.バレーボールでアタッカーに○○を上げる。
7.学問や技術を教える人。
10.頼み事をする際に書く「○○○文」。
12.映画撮影の○○地。
13.雨の日に着る「○○コート」。
14.ワナを○○○○。
15.映画「寅さん」やマンガ「こち亀」で有名なのは東京の何区?
16.「枇杷」←この果物、何と読む?
17.優れている人をに習うこと。「○○の垢を煎じて飲む」

今月の占い

ご好評をいただいています占いコーナー
申し訳ありませんが、しばらく休ませていただきます。

編集後記

 沖縄にも春らしい季節が到来していますね。こんな季節の変わり目は何故か体調が不安定です。今騒がれている「PM2.5」も気になるし、「黄砂」や「花粉症」に悩む方も多数いることでしょう。できるだけ、マスク着用で外出するか、外出を控える事も考慮しても好いかもしれませんね。そして帰宅の際は手洗い・ウガイを徹底しましょう!
 年度始な今月=新たな道へ歩き出す時期でもあります。進む道は違えど、今後の努力が報われる前途を願います。