最終更新日:2016年01月01日
諸喜田 幸代(しょきた さちよ)さん
ALS家族として
私の母はALSと告知されて7年、人工呼吸器をつけて3年になります。
『お母さんは病気かもしれない。』
当時退職まで残り1年、石垣に単身赴任中だった母が週末自宅に戻ってきた時に、話があると呼ばれ突然言われました。
左手に力が入らない、思い当たる病気で間違いなければ、それはすごく大変な病気だと。
そんなまさか…きっと治る病気だ、そうであってほしいと願う気持ちでいっぱいでした。その後の詳しい検査でALSとの診断が下り、主治医からALSとはどういう病気か説明を受けました。
病気が進行すれば今後、人工呼吸器をつけるかどうかの選択をしなければいけない事も。母は呼吸器をつける事を希望していたし、私もそうしてほしいと思っていました。
でもこの時はまだ、母がALSという病気なのだという事、人工呼吸器をつけるという事はどういう事なのかをしっかり理解出来ていなかったし、本当にそんな風になってしまうのか想像すら出来ませんでした。
その後左手以外の場所にも病気の症状が出始めていましたが、長年勤めてきた保健師という仕事を最後まで勤め上げ、なんとか無事退職の日を迎えられた事は本当に良かったなと思います。
母の病気の進行は早く、私は仕事と介護の両立が難しくなり、4年前仕事を辞め、今は介護中心の生活をしています。
最初の頃は本当に壮絶でした。どんどん症状が進む母の姿、一気に増えていく介護負担、大好きだった仕事も辞めて、自分の自由がなくなっていくいらだち、現実を受け止めきれず、一番苦しいはずの母に強く当たりました。
心のバランスが崩れかけていた私を支えてくれたのは当時担当の保健師さんでした。
保健師の島袋さんは、辛いこと悲しいこと、誰にも言えない思いも全部、親身になって聞いてくれました。
一緒に悩んだり笑ったり、1人じゃないんだと感じさせてくれた島袋さんは今でもすごく心強い存在です。
また、その後を受け担当して頂いている上原さんはじめ、他の保健師にもとても勇気付けられています。
家族会もそうです。同じ悩みを持つ人と話せる場所がこの家族会です。ここで悩みを相談したり、情報を交換したり、私にとってなくてはならない場所です。
母の病気の症状が進み、なにか良い意思伝達装置はないかと探していた時も、ALS家族会の方からの情報のおかげで、視線入力装置マイトビーと出会う事が出来ました。
ALS家族会は、面白くて暖かい人達がたくさんいるので、参加するたびいっぱい笑って元気を貰って帰っています。
患者家族会はALSだけではありません。アンビシャスには患者会の情報がたくさん載っています。なにかもし1人で悩みを抱えている方がいましたら、一度ぜひ参加してみてほしいと思います。
いま母の病気はかなり進行し、唯一自分の意思で動かせていた目の動きも、自由に動かせなくなってきています。これまでなんとか頑張って仕上げてきたエッセイも残念ながら今月分で最後になりました。
まだまだ頑張って続けてほしかったというのが私の本音です。でもそれは母本人が一番感じている事だと思います。今回アンビシャスさんから家族目線の記事を載せたいとの依頼を受け、書き始めようとペンを取ったのですが、母の事を思うと、涙が止まらなくなり何度も中断してしまいました。
母が伝えてくれる一文字一文字をこれからもっと大切にしていきます。私がこれまで在宅で母の介護を続けてこれたのはヘルパーさん、訪問看護師さん、保健師さんをはじめ支えてくれる多くの方の協力があったからこそです。ありがとうございます。
この場を借りて、これまでエッセイを楽しみに読んでくれたたくさんの方々、支えてくれた皆様に感謝です。 ありがとうございました。
今月の「表紙は語る」は、ご家族の中で介護の中心的な役割を担われている娘の幸代さんに家族の立場からの執筆をお願いしました。在宅で療養されている難病の家族の皆様もいろんな思いを抱えて生活をされていると思います。その様な方々の思いも伝えたいと今回このような企画を考えてみました。
そして諸喜田さんには平成23年2月より5年間、エッセイを、執筆頂き本当にありがとうございました。
アンビシャス会報誌に掲載したエッセイの集大成として、「エッセイに思いを託して」という冊子を諸喜田さんご自身で自費出版され、アンビシャスへもご寄贈頂きました。読者の皆様の中からご希望の方先着5名様へ進呈いたします。
(お申し込みはアンビシャス事務局まで)
県内の看護学生の皆様はそれぞれの看護学校へお送りしてありますので、各学校の教務部等へお問合せください。
アンビシャスでは平成24年より、在宅支援者向けコミュニケーション支援勉強会を継続してきましたが、今回は11月12日に県総合福祉センターにて松尾光晴さん(パナソニックエイジフリーライフテック(株))を講師にお迎えし「コミュニケーション機器のご紹介及び入力スイッチ事例紹介(スイッチの適合)」と題し勉強会を行いました。
夕方6時半からと遅い開始時間にもかかわらず、各事業所の理学・作業療法士さんや当事者家族など約50名の方が参加され、関心の高さがうかがえました。
講師の説明の中で「目的は当事者との意思疎通であり、そのための方法、個々の状況に応じたゴール設定の見極めが大事」「レッツチャット・伝の心等の機器よりも個々人に適合したスイッチを見つけだし、スイッチ操作により意思が伝わる事が重要です」と繰り返し強調されました。
(例えで、どんな高級車もハンドルが無ければ運転出来ないとアドバイスをいただきました。)
参加者からは
・動画での実例も有りわかり易かった。
・機器の事ばかりに捉われていたが、スイッチが大事だとよくわかった
・ゴールの設定、器機選定のポイント、導入までの流れのイメージがついた
・マイスイッチのサイトを参考にさせて頂きます。動画で確認できるのはとても助かります
等々の感想が寄せられました。
スイッチ適合に関心のある方は左記サイトより適合事例(動画)をご確認ください。
マイスイッチ(松尾氏提供)
http://myswitch.jp/
今回は番外編として『会報誌アンビシャス』の編集から印刷、折曲げ、郵送までの工程をご紹介させていただきます。
毎月初旬から始る編集作業は「表紙は語る」の方との数度にわたる打合せ、他のコーナーの執筆原稿の取り寄せ、編集・制作、校正と1ヶ月のうちにいくつもの工程を経て印刷にかけられます。
印刷が上がるとまず読みやすいよう横2つに折り、その後封筒に収まるよう縦3つ折りにするのですが、その労力がいる大変な作業を那覇市真嘉比にある「指定障がい福祉サービス事業所 あるにこ」さんが毎月ボランティアでやってくださいます。
それから月末発送に間に合うよう事務所スタッフで封入れを行い、郵送という手順でみな様の元へ早ければ毎月1日には届くようにしています。
このように多くの方の協力を得て、みな様のもとへ会報誌をお届けしています。もちろんそれが実現できるのも、多くの支援者の方からの寄付があり、情報を提供してくださる難病当事者の方や医療従事者・保健所など各種機関の方々のご好意、そして何より毎月の会報誌を楽しみにしてくださる読者の方々あってのことです。
ちなみに目の不自由な方用に音声版会報誌(CD録音)も発行していますが、その読み上げを先月より病気療養から復帰したばかりの「マーちゃん」こと小波津正光さんが再び担当し元気な声を響かせています。
その他、会報誌のホームページへのアップ(PDF・音声・Web版)をそれぞれにスキルのある難病当事者の方が担当しています。
会報誌は読者参加型を目指しています。アンビシャス広場の「川柳・短歌」「読者の声」へ多くの方からのご投稿をお待ちしています。
臨床心理士 鎌田 依里(かまだ えり)
新年明けましておめでとうございます。本年が皆様にとりまして幸多き、実り多き年でありますよう、こころより祈念しております。
さて皆様はご自分の今の体調(例:身体がだるく動けない)を相手に伝える時に、相手がどのような言動をするか、その返答と対応を自分だけの物差しではなく相手の体験を踏まえたり推察したりして充分に考慮すると、自他のより深い理解に繋がり、また誤解も生まずに済み、心理的により良い関係性を構築することができます。
例えば同じ難病患者からの言動と、抗癌剤治療経験者からの言動と、人工透析患者からの言動と、難病患者の支援者(医療関係者含む)からの言動とは恐らく異なるでしょう。それでも「同病者だからわかる」だけではなく「同病者でなくても魂でわかる」のです。
異なる難病・障がい・疾病患者でも、虐待被害者でも、社会的弱者でも、生きるために行ってきた努力は内容は違えど同じだからです。そして支援者も、難病患者の支援を行おうと決めて生き続けていることには、患者の納得に足る理由と努力があるからです。
人は必ずしも自分の体験を語るとは限りませんが、経験や知識が言動の基になります。また聞く時は、時々の心理状態に応じて自分が聴きたい言葉だけを受け入れる傾向があるので、状況の変化や心理状態の安定や精神的な成長によって、受け入れられる言動も変化します。
あなたのために涙を流し、あなたが不当な扱いを受けたときに心底怒り、あなたのこころに寄り添う友に、あなたはこのアンビシャスでの繋がりのなかで巡り会えていることでしょう。
新たなる年も、共に助けになって生きていくことができるよう、より良い人間関係を築いていきたいものです。
著:照喜名通
こんなキャッチフレーズを考えてみました。
一人で思い悩み、誰にも相談できず夜も眠れない。そんな状態が長く続くと医療の専門援助が必要になってきます。
私も多少熱が出ても、とりあえず様子を見て自分で対処する方ですが、身体的でも精神的な不調でも「これはいよいよ専門の医療機関に行かねば」と判断するタイミングは大切だと思います。
普通、高熱が出ると近くのクリニックで治療を受けますが、風邪等の身体的な不調の場合と違い、精神的な苦痛を感じている時、医療機関の受診を考えることは少なく、実際受診されない方が多いのではないでしょうか?
メンタル面での不調の場合、誰かに話す事でかなり肩の荷をおろせることが分かっています。
一般的に女性の方が男性よりコミュニケーションをとることが上手なので、おしゃべりすることでストレス解消していたり、世の男性はその愚痴をスナックのママに聴いてもらって、ストレス発散しているのかもしれません。しかし難病の場合、病気の事を理解して聴いてくれる人は少なく、心の負担を軽くするのは難しいかもしれません。そんな時は難病相談センターに相談してみませんか?
話は戻ってキャッチフレーズですが、読み方は同じだけど、漢字の意味が異なるが、流れは同じ方向なんです。どうですか、覚えやすいでしょう。
慶応義塾大学看護医療学部 教授 加藤 眞三著
「自立とは、多くの人に依存することである。依存する相手が増えるとき、人はより自立する。依存する相手が減るとき、人はより従属する。従属とは依存できないことだ。助けて下さい、と言えたとき、あなたは自立している。」安冨歩氏の書かれたこの言葉を患者さんの集まりなどで紹介すると、その言葉によって救われたといわれる患者さんも多い。
現在の政策は、一人だけで支援を受けずに生きていくこを理想としているように見えてしまう。だが、自立することは、一人だけで生きていくことではない。人間は一人だけで生きていくことは不可能だという、ごく当たり前のことを私たちに再確認させてくれる言葉であるからだ。
さて、「助けて下さい」と言えないだけではなく、自分の苦しいことやつらいことについて話すことができない人も多い。そもそも、暗い話を他人にしてはいけないという思い込みもある。こんなことを話したら嫌がられるのではないか、うっとうしいと思われるのではないかと考えてしまう。
また、実際に話してみると、それがあまり理解されなかったり、歓迎されないことも多い。「そんな暗いことばかり考えずに」とか、「あなたなんかよりもっと悲惨な人もいるわよ」とか否定的に返されてしまうと、もうそれ以上話しを続ける気持ちが失せてしまう。患者会の中でさえも、暗い話はしづらい雰囲気があるという。
そんなことで始めたのが、「慢性病患者ごった煮会」である。肺高血圧症の患者会の世話をしている重藤さんから相談を受け、それでは病名にこだわらずに、患者さんに集まってもらい、辛いことや苦しんでいることを話せる場を創ろうということになった。
自分が病気を抱えてどのような問題が生じたのか。病気のためにどのような不安を感じているか。何がつらかったか。つらいときなどに、どのように対処してきたか。つらさを乗り越えた人は、どのようなことが問題を乗り越えるきっかけとなったかなど、あくまで、自分の体験を中心に話してもらうようにお願いしている。
言い放し、聞きっぱなし、批判しない、同情しない、ほめない、けなさない、評価しない、自分と比べない、自分の意見を押しつけない。これらの簡単なルールを定めて6~8人のグループで90分ほどの談話する時間をもっている。
最初に話す人が重い話をしてくれると、それ以降の話しもしやすくなる。苦難を乗り越えてきた人には、乗り越えて今はこんなに幸せという話ではなく、辛かった時のことを話してもらうようにしている。
(次号に続く)
患者の力: 患者学で見つけた医療の新しい姿
出版社: 春秋社
「患者には力がある!」 毎日を健康に生きるために、そのためにも、真の患者中心の医療を実現するために、いま必要なこととは。
私の今の体調は体がだるく、早く楽になりたいと思うほどきつい。くいしばりもひどく毎日思いきり舌を噛んでは出血を繰り返している。
目の動きも悪くなり、文字板を使うのも難しくなった。
それでもエッセイは続けようと、一文字一文字時間をかけて頭の中の文章を伝え、それを娘がノートに書き留め上手に構成、編集し仕上げてきた。
最近は、目を動かす事すら難しい時が多くなり、思いがすぐに伝えられない辛さ、思い違いを訂正出来ない生活は大変。
5年間毎月書き続けたエッセイを今月で最後にしたい。
一緒にやってきた娘編集長に感謝。
このような場を提供してくれたアンビシャス、支えてくれたたくさんの方々、いままで応援してくれた皆さん、本当にありがとう。
5年間大変お世話になりました。楽しみも苦しみも諸喜田さんの生の声に触れることができたエッセイでした。残念としか言えないのですが、本当にお疲れ様でした。
また、遊びに行きますので、これからも宜しくお願い致します。
照喜名 通
沖縄IBDでは毎年恒例の調理実習を県内病院で勤務されている管理栄養士の方々のご指導のもと11月1日(日)那覇市保健所調理室で行いました。(今年で17回目)
潰瘍性大腸炎の患者さんは、状態が悪い時以外は普通に食事をされますが、クローンの患者さんは消化吸収機能が低下して十分な食事が摂れなかったり、炎症によりエネルギーを奪われ、低栄養状態にあるため日ごろから食事制限が強いられます。
そこで毎年クローン病患者にやさしいメニューを作り、日々の生活のQOL向上に役立てています。
今年のメニューは、「ふわとろなデミオムライス」「コクのある野菜スープ」「ヨーグルトスフレ」「素うどん」を作りました。
みんなと一緒に作る楽しさ、みんなと一緒に食べる楽しさはとても有意義な時間です。調理実習は、毎年秋に開催していますので患者さん及びご家族のみなさん、お気軽に参加ください。
最後になりますが、栄養士のみな様、毎年ボランティアでご指導を頂きありがとうございます。
164号を読んで
162号を読んで、当事者の方が発症してから現在に至る様子や、絵画等の創作活動に難病を患っていても可能性は無限大だなと感じました。またユニークな短歌・川柳に障がいがあっても明るく日常生活を送っている様子がうかがえ、もっと沢山の人にアンビシャスの会報誌を知って欲しいと思いました。
〈看護学生 M.Y〉
11月号の表紙、新里龍太さんの「支えられるだけでなく支え合える人でありたい」という言葉に患者として支えるだけでなく、難病も個性と捉えその人そのものを尊重する事の大事さを学びました。また表紙の方の体験談に他の難病の方が勇気付けられ、家族の支えに繋がりとても重要な情報源と思います。
〈看護学生 M.M〉
難病がある方や家族の方、サポートする方々で日常感じている悲しみ、辛さ、笑い、皮肉や優しさなどを短歌・川柳にしてご応募ください。
採用の方には寄稿料として千円相当のクオカードを進呈します。詳細は事務局までお気軽にお問い合せください。
難病短歌
秋風を 感じる肌に 瞼落ち 思い起こせば 元気な私
作:ペンネーム miyaさん(繊維筋痛症)
線維筋痛症を発病以来、風・光も 痛く忘れてた「風」。天気のいい日、思いきってベッド横の窓を 開けた時自然な風が心地良く感じられた。
難病川柳
忘れ物 みんな薬の せいにする
作:ペンネーム 樹々さん(パーキンソン病)
都合のいい言い訳でしのいでいます。
オススメ3選
「もしも昨日が選べたら」
日常生活を自在に操れるリモコンが手に入ったら、どうしますか?
ファンタジーコメディで、考えさせられもする作品。
「ウォルター少年と夏の休日」
マイケル・ケインとロバート・デュバルの老兄弟が、14歳少年と過ごす、ひと夏のハートウォーミングな作品。
年の取り方には、理由・原因ってあるもんなんですね。
「ペイフォワード」
もし君たちが世界を変えたいと思ったら、何をしますか?
実行に移すのは難しいかもしれない事を、個々に地道に実践すれば何かは変えられると、思う。
一言で表すなら・・・。
★渡久地 優子{進行性骨化性線維異形成症(FOP)}★
・・・カラーセラピーやパワーストーンも好きで、時々、ネットで見てます。
この項を書いている12月中旬過ぎ、いつまでも暑く「冬はどこ行った」と日常の会話を交わしていたと思ったら、突然の寒波襲来!全く心と身体の準備が整わず、体調を崩す方も見受けられる今日この頃ですが、みなさん体調は如何ですか。
「表紙は語る」でも触れたのですが、5年に渡り本誌のエッセイコーナーを担当して頂いた諸喜田さんが今月号をもってご卒業されました。
今まで私たちは出来上がった「エッセイ」を何気なく普通に読んでしまい、その過程の中、大変な思いで一文字一文字、言葉を紡いで生まれた文章だという事をつい見過ごしていました。さりげない言葉の裏のご苦労にただただ頭が下がるばかりです。
これからは少し肩の荷をおろし、一読者として会報誌を楽しんでください。
次月からまた新たな方にこのコーナーをお願いする予定で人選を進めています。乞うご期待!
新年を迎え、寒さが一段と厳しい時期になりますが、みな様、身も心も健やかにお過ごし頂くよう祈念申し上げます。
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