最終更新日:2018年07月31日
木場 恵美子(きば えみこ)さん
パーキンソン病
私が車の運転をやめ歩き始めてから4年近く経ちました。家から20分程の職場まで、晴れの日は日傘にサングラス、タオルを首に巻き、雨の日には雨傘、レインコートで、まだ自分の足で歩けることに感謝し、空や風や花や周りの景色を楽しみながら、歩数計と時計を見て体調が分析できるようになりました。
思うように足が進まない日もあり、自分でも歩くのが苦痛になる日もありましたが、歩く事がリハビリ、自主トレと明るく思い直してから楽しく歩けるようになったかもしれません。暑い真夏の日も、また土砂降りの雨の日も頑張れた自分を自分で誉めています。
私は2003年1月に神戸から宮古島市へ移住して来ました。私54歳、母76歳でした。自動車免許を取得し、接客や歌うのが好きな私にピッタシの観光バスガイドの職に就きました。海外生活の経験を活かし、外国からの観光客をもてなす機会にも恵まれ、宮古島の歴史や自然、文化等たくさんの事を学びながら楽しい日々を過ごしました。
ところが2011年頃、母の認知症が進み介護の為バス会社を辞めることになりました。退職後はパソコン教室に通い、保育園で英語を教える生活の変化からか体に異変が起こりました。転びやすくなり、皆より歩く速度が遅くなったり、車のドアが開けづらく、体操教室でも出来ない動きがたくさんあって、最初は最近中高年の間で増えているロコモ症かな?位に思っていたのですが、アメリカに住んでいる娘が、久しぶりに会った私の歩き方が変な事や私の表情が硬くなっている事に驚き、直ぐに診察に行くよう強く勧められました。
2012年、宮古島市内にある神経内科の診療所で診てもらい、更に本島の専門病院に3週間、検査入院した結果、パーキンソン病と診断されました。ショックでしたが、入院中にもっと重い病気で苦しんでいる患者さんとの出会いや、私と同じパーキンソン病だった伯母が、好きな洋裁や旅行、ショッピングにも出かけていた姿を思い出し、かえって病気に親しみが持てました。
マスクフェイスという笑顔が消えていく症状と知り、笑うヨガ教室に通ったり、筋肉のこわばりを防ぐ為、空き時間を見つけてはストレッチに重点を置いたジムにも通っています。薬の調整が上手くいっているせいか、まだ私がパーキンソン病だとは知らない友人・知人もいます。
朝2時間、コンドミニアム・マンションの管理人の仕事をした後、午後から2時間、保育園で英語を教えています。
この病気になってから健康な人なら簡単で、何でもない事が、出来なくなってきています。ペットボトルのふたを開けたり、果物や野菜を切ったり、皮をむく事、洋服の着脱、洗濯物を干したり、たたんだりする事、旅行用のスーツケースを運ぶ事、レジで財布からお金を取り出す時間がかかる事、爪切りや、マニキュアが上手く出来なくなったり、手首や指のしびれと硬直もあり、夜はヨダレが出て枕を濡らしたり、箸も上手く使えません。
健康な人にはとても想像がつかない、些細な事が出来ず鬱になりそうでしたが、3年前に孫娘ができてからは、孫の成長を見届けるのが楽しみで、元気なお婆ちゃんでいようと思います。
去年、娘の招きでアメリカへ行ってきた時は、恥ずかしがらずに航空会社が提供する体の不自由な人の為のサポート・サービスをお願いしました。宮古から那覇、成田、ボストンと出発ロビーから着するまで多くのスタッフに助けられ、お蔭様で快適な旅になりました。自分で出来ない事は近くにいる人に勇気を出して「手伝ってください」というのも恥ずかしい事では無いんだなと教えられました。
病気による死の恐れが無いとは断言できませんが、教会に通っていて「神様はいつも貴方と共におられる」という御言葉に励まされています。
私が病気になって気づかされた沢山の事は、病気=不幸ではないのです。全ての事に感謝し喜びながら「自分が出来る事で人の役に立つ事は無いかな」と探しながら一日一日を大切に生きたいと思います。
91歳になった認知症の母を毎日介護しながら仕事を続けられる奇跡。多くの人に支えられ本当にありがとうございます。アンビシャスの記事を読みながら、病気に負けず活き活きと生きている方の事を知り、私も勇気が出ました。
年に数回バスガイドを頼まれる事があります。ギネスブックに挑戦するつもりで、忘れかけた記憶をたどりながら楽しんで案内しています。歩ける限り歩き続けたいと願っています。昔弾いていたギターを弾こうと、最近ギター教室に通ったり、カラオケや歌を歌い、会話を楽しんでいます。口を大きく開けることは体に良いそうです。
薬が切れると口や体が硬直し固まってきます。言葉も呂律が回らず、言いたいことが相手に伝わりにくく、寒い日は尚更です。こんな時は温かい風呂に入るのも効果的です。同じパーキンソン病の友人と会い、お互いの症状を話し合ったり、自分が試して良かった方法や本などの情報交換等もとても役に立ちます。同じパーキンソン病でも皆少しずつ症状が異なるようです。
巷には沢山の書籍も売り出されています。自分に合った治し方であせらず、ストレスを溜めず、自分を追い込まない。自分を愛する事を続けていきたいです。
若くて元気な頃は何も恐れるものは無く、会う人も地位や肩書、外見で判断する高慢な私でした。思い出すのも恥かしいほど最低な私でした。人はどの人にも価値があり、その人の生まれた使命があると、最近になりやっと気づきました。私は私の使命を死ぬまでに果たそう。私は私らしく私の道を歩んで行こと思います。例え険しい道でも、少しずつ前を向いて歩こう。生かされている今日一日を感謝しながら。病気にならなかったら私は変わらなかったかも知れません。人間の弱さも、老いる事も受け入れられる私になれて嬉しいです。パーキンソンありがとう。
毎日、認知症の母を世話するのは大変な労力が入りますが、もし母が側に居なかったら、私はもっと病気に甘えていたかもしれません。
最近、保育の勉強をしたいと思い通院している診療所の主治医に相談したら「貴女が何かをやりたいと外に向かって行動することが、この病気には一番必要だよ、頑張ってね」と励ましてくださいました。
Be Ambitious 大志を抱けですね。夢を捨てないことが、生きる活力なのかもしれません。
木場 恵美子(きば えみこ)さん
1949年 東京生まれ
2003年より宮古島在住
【趣味】おいしいお店や景色のよい場所を見つけること。旅行
【最近の楽しみ】ラインで送られてくるアメリカの孫の動画を見て元気をもらうこと
【挑戦したいこと】フォークソングを弾き語りで歌うこと。保育士試験に合格すること。
今年度、最初のセカンドオピニオンを6月24日、琉球大学附属病院の新里朋子先生のご協力を頂き、循環器系疾患の患者・家族の方のご相談をお受けしました。
「ペースメーカーを入れた方が良いと医師から言われているが、メリット・デメリットを教えて欲しい。」「日常生活で気をつけなければならないことはあるか?飲酒はしても良いのか?」「運動は良いと言われたが、どのような運動をしたら良いのか?」といったご相談がありました。実際に自宅で出来る軽いストレッチも教えて頂くことが出来ました。なかなか外来受診の際にはゆっくりとお話しをするのは難しいと思いますが、セカンドオピニオンで不安や疑問に感じていることをお聞きすることが出来たのではないかと思います。新里先生、ありがとうございました。
今後は、膠原病系・消化器系・肝臓系・腎臓系・下垂体系・神経系のセカンドオピニオンを計画しています。各疾患群ともお一人30分、4名迄です。前記疾患群に該当の方でご希望の方は、当紙での案内やホームページ、各保健所の掲示板等でご案内いたしますのでお見逃しのないようにお願いします。
今年度、新たに難病担当になった保健師を中心に重症難病療養者の「災害対策・コミュニケーション支援」についての研修会を6月27日に南部保健所で実施しました。同研修会は毎年実施していますが、今年度は講師の都合により平成31年1月を予定しているため、台風の多くなるこの時期、災害時対応策の研修が必要との声を受け、急きょ開催しました。
当日は指定難病の更新前でご多忙にもかかわらず、20名の保健師が参加してくださいました。
研修会では、災害対策の概要の説明の後、文字盤・口文字によるコミュニケーション方法や、意思伝達装置の実演等、実際に機器に触れ、体験して頂くことを重点に行いました。今年は例年になく台風の発生が早く、また発生件数も多くなることが予想されます。台風以外にも全国的には地震や土砂災害等頻発しており、いつ・どこで災害に巻き込まれるか分からないので、日々の備えが大切になってきます。
この研修会を通して学んだ台風等による停電時の対応策や、コミュニケーション支援のノウハウ等それぞれの相談現場で活かしていただければ幸いです。
臨床心理士 鎌田 依里(かまだ えり)
人は多種多様の苦悩や問題を抱えています。もちろん身体疾患や難病を抱えて生きることはそれだけでたいへんなものです。しかし、社会には様々な人がいます。難病を抱えて生きる人が配慮されない状況も少なからずあります。「自分たちはこんなにたいへんなのだから、配慮してくれてもいいじゃないか!」「もっと支援をしてくれてもいいじゃないか!」と叫び、怒りをぶつけたくなること、理不尽を嘆きたくなることもあるでしょう。
それはもっともな意見です。わたしももちろん理解しているつもりです。しかし、世の中には様々な考え方の人がいて、その人自身が抱えている苦悩や問題の種類によっては、「自分の方がたいへんなんだ」「もう十分に助けてもらっているでしょ。こっちの方を支援してもらいたいくらいだ」という意見もあることもまた事実です。
わたしたちはその事実に対して、反発・非難する必要はありませんし、しない方がいいです。
「助けてもらえることが当たり前」「支援を受けることは当然の権利である」と、こころのどこかで思う部分があると、難病以外の他の種類の悲哀辛苦を抱えて生きている人の反感をかい、言葉には出されない反発を生むのです。
どのような質・量の悲哀辛苦を抱えていたとしても、「生きているのだから辛いこともある、…しかし嬉しいこと楽しいこともある」と思えるこころの強さをもつと、自然と様々な人と円満な関係を構築できる可能性が広がるのです。
そしてそのことが、難病を抱えて生きる人がより生きやすい社会を創ることに繋がるのです。もちろん、そのような考え方を様々な人がすることが、どのような状況下の人にも優しい環境を創ることに繋がるのです。
著:照喜名通
今年はデイゴの花が沢山咲き台風の当たり年と言われますが、真偽のほどはともかく、今のところ発生件数が多いようです。
アンビシャスでは平成24年度より、難病を持ち、人工呼吸器で在宅療養されている方への非常時電源確保の為の「人工呼吸器用外部バッテリー等貸与事業」を沖縄県より受託。平成26年度からは小児慢性療養児の事業も受託し、昨年度までの累計で149件の支援を行っています。
難病で自ら呼吸が出来ず、人工呼吸器の補助で呼吸をしている方は、台風等で停電になると、即、生命の危機となります。緊急時は、ゴムバッグのような蘇生用具を手動で呼吸に合わせ空気を送り込んで生命を維持しなくてはいけません。
停電が数分、もしくは、数時間なら人工呼吸器の内蔵バッテリーで持ちこたえる事も出来ますが、長時間になると電気の切れ目が命の切れ目となってしまいます。
人工呼吸器は精密機器の為に純正の外部バッテリーが必要で、貸与事業ではそれを補います。また、外部バッテリーの充電を目的とした、発電機の貸与もあります。さらに、使用機器は酸素飽和度測定器や痰の吸引器など複数あり、携帯電話などの生活機器も全て電気が必要です。アンビシャスでは、貸与事業も含め緊急時の電源確保策について、出来る限りの支援を今後とも継続していきます。
慶応義塾大学看護医療学部 教授 加藤 眞三著
今回は、記録が残っている時代の医療から医療の社会性を考えてみたいと思います。
古代ギリシャの有名な歴史家ヘロドトスの書「歴史」には、次のように書かれているそうです。
当時は医師がいないため、病人がでると家に置かず広場へ連れていった。通行人は病人に症状を訊ね、同じ経験があるとその治療法を教えた。誰でも広場で病人に、どういう病気かを訊ねずに、知らぬ顔をして通り過ぎてはならぬことになっていた。
つまり、医療の智恵の集積がなく、個人の経験のレベルで留められていたようです。ただし、その個人の経験は社会に歓迎されなくてはならない仕組みとなっていたようです。
現在の欧米の医療の源はヒポクラテスに求められます。ヒポクラテスは紀元前460年から370年頃の医師ですが、父親も祖父も医師という家に生まれ医学の智恵を学びます。ヒポクラテスは、患者の観察とその記録の作成を重んじました。その知識が集積されるからです。そして、厳格な職業意識をもち、弟子への厳しい教育でも有名でした。
患者へ危害を与えないこと、どんな家を訪れる時もそこの自由人と奴隷の相違を問わず、不正を犯さないこと、患者の秘密を厳守することなどをとなえた「ヒポクラテスの誓い」は、現在でも通用する医療の大事な価値観が含まれており、欧米の医学校で卒業時に使われています。
一方で、現代の事情とは異なる面もあります。例えば、誓いは次のような項目で始まっています。
「この医術を教えてくれた師を実の親のように敬い、自らの財産を分け与えて、必要ある時には助ける。師の子孫を自身の兄弟のように見て、彼らが学ばんとすれば報酬なしにこの術を教える。著作や講義その他あらゆる方法で、医術の知識を師や自らの息子、また、医の規則に則って誓約で結ばれている弟子達に分かち与え、それ以外の誰にも与えない。」
つまり、誓いは専門家集団内における教育による伝達と伝承を促すものではありますが、同時に他の人には誰にも与えないという閉鎖性をもつものでもあったのです。現在では、医療の情報は、社会全体あるいは人類の財産であり、公開することが求められています。情報の公開は、専門家の間だけではなく、一般市民にもアクセスできることが前提となっています。
また、「自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。」と宣言するように、治療法を選択する主体が患者ではなく医師であることを明確に記しています。この当時の医療はパターナリズム(父権主義)の医療であり、親が子供のために良かれと思ってやることが正解であるという医療であったのです。
東洋経済オンラインに加藤先生による「市民のための患者学」2週間ごとの連載スタート!
http://toyokeizai.net/articles/-/143366
患者の力: 患者学で見つけた医療の新しい姿
出版社: 春秋社
「患者には力がある!」 毎日を健康に生きるために、そのためにも、真の患者中心の医療を実現するために、いま必要なこととは。
約1カ月置きに自由が効かなくなっていく体。
毎日静かに進行し、それまで動かせていたはずの
体のパーツが思うように動かせなくなっていく
体と付き合いながら思う
『無事にひと月過ごせた喜びと、また一つ動かなくなる体、悲しみにも似た悔しさ』
心で叫ぶ、
これ以上は進行しないで欲しいと。
そして願わずにはいられないんだ、進行抑制や予防薬だけではなく
病状が進行した人でも完治させることのできるお薬が開発される事を…
難病がある方や家族の方、サポートする方々で日常感じている悲しみ、辛さ、笑い、皮肉や優しさなどを短歌・川柳にしてご応募ください。
採用の方には寄稿料として千円相当のクオカードを進呈します。詳細は事務局までお気軽にお問い合せください。
難病川柳
なんでだろう 夢の中では まだ元気
作:樹々さん(パーキンソン病)
夢では今の不自由な身体じゃなく、毎回元気なんです。これって私だけ?
「素晴らしきかな、人生」
最愛の娘を亡くした男性が、喪失感から情緒不安定になる。
そんな時、周りが“こっそり”手を差し延べる。彼は、変わっていけるのか…。
ウィル・スミス主演、キーラ・ナイトレイ、ヘレン・ミレン
ケイト・ウィンスレット、エドワード・ノートンらが、脇を固めている。
★渡久地 優子{進行性骨化性線維異形成症(FOP)}★
・・・カラーセラピーやパワーストーンも好きで、時々、ネットで見てます。
西日本地域の集中豪雨の被害に遭われました皆様に心よりお見舞い申し上げます。今回の災害で避難された会員の方もいらっしゃるとのことでした。大変な状況ですが、早く元の生活に戻るように願っています。
第11回支部総会は、初参加の方、友人との再会、医療、福祉の支援者の皆様、本部理事2名のご参加、準備から片づけまでお手伝いいただいた学生ボランティア、アンビシャス、沖縄病院、多くの方に支えられ開催することができました。
フラダンスで潤い、あたたかな雰囲気に包まれ、その後はALSをもつ会員さんから、療養がはじまり、漠然とした不安な日々から現在に至るまでの経過について、口文字で実演を兼ねた発表がありました。
口文字とは、文字盤を持たずに出来るコミュニケーションの技術です。お互いの習熟が必要ですが慣れると道具がなくてもどこでもできます。発表では、現在の生活を選択してよかったという言葉が印象的でした。やり方についての説明や実践も行いました。
西日本を襲った集中豪雨による被災に心を痛めている方が多いと思います。被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。今年は台風も頻発しています。これ以上の被害が出ないことを切に願っています。
地震と違い台風の場合はある程度予測ができ、早めの対応策を取ることが可能です。もちろん想定外の事態はありますが、出来る限り早め、早めの対応を取ることが肝要かと思います。お互いに充分に気を付けましょう。
さて今月の「表紙は語る」宮古島市にお住いの木場さんにご執筆を頂きました。認知症のお母様の介護をしながらの療養生活、今まで出来ていた些細なことが出来なくなることへの不安を、持ち前の明るさで跳ね返し、夢に向かっていく様子を語って頂きました。
ご苦労も多いかと思いますが、これまでの「表紙は語る」の記事に励まされたというご感想を頂き、スタッフ一同とても嬉しく、またその使命の重要性を再認識した次第です。今後もこの情報誌が途切れないよう、気を引き締めて紙面作りをして参ります。
文 仲村明
Copyright©2002 NPO Corporation Ambitious. All Rights Reserved.