最終更新日:2019年08月02日
池崎 悠 (いけざき はるか)さん
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
私と病気の出会いは、2007年、中学3年生の冬のことでした。原因不明の腕の痛みから始まり、数日~数週間で両腕を動かすことが難しくなりました。「腱鞘炎」の診断を信じ、湿布を貼って過ごしていましたが、文字を書くことや着替えることもできない日々。受験生だったこと、へき地に住んでいたことが重なり、ようやく大学病院で慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)と診断されたのは、高校入学の前日でした。やっと治療ができる、そしてこの不調は気のせいではないと証明されたようで、心底ほっとしました。
CIDPは、主に腕や脚が運動神経の障害によって動かしにくくなる神経難病です。私の主な症状は、手先、腕の脱力、疲れやすさで、ステロイド薬の服用、免疫グロブリン点滴でそれを押さえています。症状に加え、薬の副作用のムーンフェイス、食事制限、易感染症、胃腸障害などもあります。発症までは健康体だったので、発症直後は、自分の体、生活、そして人生の手綱を病気に奪い取られてしまった気分でした。
高校生活では2度に渡って数週間入院。授業もフルでの出席は難しく、保健室通いや早退を繰り返す毎日でした。友人や教師からは「元気そうに見えるね」、ノートを取るのが難しいため、電子機器の使用を申し出ると「社会に出たら特別扱いはされない」といって相手にしてもらえないこともありました。自分が何に困っていて、何を思っていて、何をしてほしいのか伝える言葉を持っておらず、誰もわかってくれないという思いを一人深めていました。
そんな中、発症前から好きだった勉強だけは、病気に奪い取られたくないという思いで一生懸命取り組みました。課外の出席や課題について、先生方に便宜を図ってもらうことも徐々に覚えました。
大学では理解ある友人や先生に恵まれ、病気のこと、してほしいことをうまく伝えられるようになりました。慢性疾患を持つ人達のための「慢性疾患セルフマネジメント」ワークショップにも参加し、自分の体、人生の手綱を握っているのはあくまで自分であり、自立とは自分で何でもできるようになることではなく、依存先をうまく増やすことなのだと学びました。
同時期に男女共同参画推進センターのインターンに参加し、妊娠出産、闘病など、キャリアの上でマイナスとされている要素も、見方によって強みになることも知りました。病気はマイナスだと考えていた私にとって、これは大きな発見でした。
しかし、私一人の発想の転換では上手く行かないことがありました。就職活動です。フルタイムで働いたこともない上、一般企業の無知や偏見もあり、病気の開示についても悩みました。他の難病者の情報も、アクセスできる支援機関も多くはありませんでした。
そんな時、佐賀県で難病者の就労問題にフォーカスした団体が発足したことを知りました。通って勉強させてもらい、福岡でも難病者の就労を考えるグループ「難病NET.RDing福岡」を2014年に設立しました。毎年の世界希少・難治性疾患の日記念イベント開催をはじめ、就労をテーマとした交流会や懇談会、議員との意見交換会等を開催し、近年では新しい取り組みとして、難病カフェ、若者限定の交流会、がんサバイバーとの意見交換会も行っています。
参加者から「今日は来られてよかった」の一言を聞くだけで、活動を続けていてよかったと心から思えます。私は悩みを分かち合う人が文字通り誰もいませんでした。病と向き合う人が気軽に仲間と愚痴を言えて、解決したい問題があれば一緒に考えることができる、頼れる場所であり続けたいと思っています。
こうした活動を続けながら、卒業後は医療機関に就職し、広報、秘書として、医療現場を内側から勉強してきました。同時に難病の活動を通し、より幅広い世代の意見を取り入れた当事者活動、広い観点からの支援、提言が必要であると考えるようになり、昨年結婚して関東に移住したのをきっかけに、「一般社団法人ピーペック」を仲間とともに立ち上げました。ピーペックは、難病だけでなく、慢性の病気をもつ皆が、自分の望む生活に近づけるような支援をしています。
また先日は、スイスのジュネーブで行われたNCD alliance主催のNCDs(がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患などに代表される非感染性疾患)当事者の、アドボカシー能力強化ワークショップOur views, our voicesに参加しました。11か所の国と地域からの参加者とともに、NCDsを取り巻く諸問題に対し、効果的に当事者の声を政策立案につなげていく方法について学びました。
そこで言われていたのは、あなたが経験したストーリーは、皆のストーリーであり、社会を変える大きな力があるということです。
あくまで自分の体験は個人的なものであり、毎回知見を社会に還元する必要はありません。しかし、体験を基にした語りが社会に開かれたとき、それは大きな力を持ちます。
私は発病当初からブログを開設し、ずっと自分の生きづらさを自分の言葉で綴ってきました。しかし、治療や生活で大変な難病者全員が、自分のつらさを的確に語ることは難しいことです。こうした難病者の、「なんかつらい」「生きづらい」といった声を、私のほんの少しのスキルで代弁し、社会を変える大きな力につなげる。病気があっても当たり前に社会で生きていけるよう、病気になっても大丈夫と言える社会へと変えていく。
そして難病者だけでなく、すべての人が生きやすい社会を皆と一緒につくっていくことが、私のライフワークだと思っています。
池崎 悠(いけざき はるか)さん
1992年生まれ 熊本県出身
【趣味】カメラ、美術鑑賞
【最近の楽しみ】ベランダで野菜を育てること
【好きな作家】ミランダ・ジュライ
6月29日に難病当事者を対象に難病ピア・サポーター養成研修を開催しました。当研修は厚生労働省難治性疾患政策研究事業の一環として企画され、富山大学の伊藤智樹先生、新潟病院の後藤清恵先生を講師にお招きし、「仲間と支えあい、自分も成長する」をテーマにピア・サポーターとしての心構えを学ぶ貴重な機会となりました。
参加された方からは、「みんな病気をもっており、根本的につながっている。分かり合えているという感じがした。仲間意識が芽生えた」、「引いて関わることの大切さ、距離感を学んだ」「学んでも学びつくせない。また参加したい」、「病気になって初めて前向きになれた。一歩前進できた時間。あっというまだった。」という感想が聞かれ、仲間を支えるスキルを学ぶとともに自分自身の気づきにもつながったようです。
貴重な研修内容を提供してくださいました、伊藤智樹先生、後藤清恵先生に深く感謝申し上げます。
6月13日に南部保健所を会場に、今年度新たに難病担当になった保健師を対象に、重症難病療養者の「災害対策・コミュニケーション支援」についての研修会を開催致しました。
配置転換により毎年新たに難病担当になる保健師も多く、重症難病療養者への支援の重要性を理解していただく機会として指定難病の更新時期、また台風の発生する前のタイミングで毎年この研修会を開催しております。
昨年度は大型台風により長時間の停電を余儀なくされた地域や、県外でも土砂災害など自然災害が多発しており、災害対策の重要性が高まってきていると感じています。また、コミュニケーションの方法についても、いろいろな方法があることを事前に知っておくことにより、利用者との会話の中で生かしてもらう事を目的とし、透明文字盤・口文字・レッツチャットなどのコミュニケーション機器を実際に触って体験してもらいました。
当日は指定難病の更新前のご多忙な時期にも関わらず、20名近くの保健師の方がご参加下さいました。研修会を通して学んだ非常時における対策やコミュニケーション支援の方法など今後現場で活かしていただければ幸いです。
毎年、県内各ハローワークにて障害者雇用連絡会議が開催されていますが、アンビシャスも本島内の3か所の連絡会議に参加させて頂いています。
ハローワーク、労働局、障害者職業センター、障害者・生活支援センター、職業能力開発校、特別支援学校など多くの関係機関が一堂に会し、障害者雇用について意見交換を行いました。
それぞれの機関が持つ役割や活動内容、課題などが話し合われ、顔を合わせて集まる機会を設けることにより、情報交換や課題解決に向けて関係機関が迅速に対応できるような連携体制を構築することの重要性を感じました。
臨床心理士 鎌田 依里(かまだ えり)
アサーションとは、自分も相手もたいせつにする気持ちのよい自己表現のことです。アサーションの方法では
(1)自分の気持ちに素直に耳を傾ける、
(2)「聴くこと」と「話すこと」に意識を向け、お互いのことをたいせつにしているかを考える、
(3)相手に受け入れられやすい表現を用いて話をする、という手順を踏むことが一般的な方法です。
自分の気持ちに誠実であり、その気持ちを率直に表現できること、そして相手の立場や役割に関わらず対等で居ることがたいせつです。
手法としては、(※1)I messageや本題に入る前に当たり障りのない会話を入れたり、穏やかな表情や声のトーン、身振り手振り交えて伝える等があります。
自分の気持ちを率直に主張する一方で、相手の気持ちや意見にも素直に耳を傾けることも重要です。耳を傾けている姿をわかってもらうために、相槌を多く用いたり全身で頷いたり表情で表現する等の一工夫も必要です。
お互いを尊重し、win-win(自分もOK、相手もOK)の関係を目指しましょう。そして自分の主張や言動の責任は自分で引き受ける覚悟をもつことも忘れてはなりません。
ただし、このようなアサーションの方法を用いる前段階で、普段から「このひとの話であれば聴こう」と思われるような人間関係の構築は必須です。すなわち、物事に対する取り組みが誠実であったり、親身になって相談に乗っていたり、素直に相手に感謝を述べることができたり、周囲のひととの話題作りで周囲のひとの好きな話題を提供することができたり、場を和ませる存在であったりすることも、必要なのです。
ちょっとしたアサーションの技法と普段からの心がけで、自分も相手もたいせつにしていきましょう。
(※1)自分を主語にした気持ちの表現方法(例「わたしはそんなことを言われると悲しい」)
著:照喜名通
ごく稀な病気で現在の医療では完治することは無く、国の指定を受けている難病と診断され医療費の助成があることは恵まれているとも言えますが、世帯所得が高収入の方の場合には、そのメリットを感じることが少ない人もいます。
先日、ある患者さんの相談を受けている際、難病の受給者証を持つことによる優遇は殆どないと説明したら、「病い損になるのですねー」とそのような言葉が出てきました。というのも障害者手帳を持っていると、企業や行政で障害者法定雇用率に換算されたり、交通機関や公共施設の利用時に無料または割引があります。しかし、難病の受給者証では障害者手帳のような配慮はないのです。
平成25年に障害者総合支援法に、知的障害、身体障害、精神障害に加え、新たに難病も障害の種類に追加されました。当時の喜びは今でも鮮明に覚えています。あれから6年も経過しましたが、いまだに沖縄県立図書館、博物館など県の施設や沖縄都市モノレールなどの公共交通機関ですら、難病を持つ者への配慮がありません。難病になり色々と失うものが多いのですが、少しでも得るものも欲しいです。今年は選挙もあります。声をあげていきませんか?
慶応義塾大学看護医療学部 教授 加藤 眞三著
人生の大きな危機に直面したとき、その危機に対して意味を求めてしまうのが人であることを述べてきましたが、それではそんな人に対して、どのようにすれば支援することができるのでしょうか?患者会などでもどうすればよいのか一番悩むことではないでしょうか。傾聴をすることが、先ず一番目に大切なことですが、傾聴といってもどのようにすればよい傾聴になるのかがよくわかりません。今回は傾聴について考えてみたいと思います。
「傾聴では相手のいったことをリピートするのだよ」と教えられて、相手の言葉を繰り返すことばかりに専念している人もいますが、それはよい傾聴とは言えません。そんなことならロボットにでもできます。ロボットに話していても、意味を見つけることは難しいでしょう。聴いてもらう方でも、これを繰り返されると「ああ、またこれだ」と冷めた気持ちになり、白けてしまいます。
つぎに、多いまちがいは、解答を教えてあげようとすることです。「それは、こう考えてみたら?」「そうなら、こうしてみましょうよ」。ラジオやテレビでみる人生相談のコーナーように聴くのではなく答えを与えることが良いのだと思い込んでいる人は、ちょっと聴いただけですぐに答えを与えようとします。人生の達人なら何でも答えてあげられると思っている人も多いし、そのように答えを与えてもらうことを求める人もいることは確かです。
しかし、このような他人から与えられた答えではその人の人生を生きることにはつながりません。
もちろん、どのようにすれば助成金を受けられるのかなどの、知識を伝えることならそれでよいのですが、スピリチュアルな苦悩、すなわち人生の意味や危機を迎えたことに対する意味についての悩みは、その人が答えをもとめ、考え、納得するなかで、本人が見つけていくものです。
人は、人生の重大事件に直面すると、色々な感情がわきおこり、思考がみだれたり思わぬ行動をしたり、意気が消沈してしまいがちになります。しかし、その感情や思考のおこり方、行動の裏に実は魂のさけびがあるのです。その魂が何を欲し、どのようにしたいのか、その本人自身も気がついていない心からの願いを見つけようと、その人と一緒に伴走するのが本来の傾聴です。本人も気がついていないし、私も知らない。そんな願いを一緒に探そうという気持ちで対話をしていくと、よい傾聴になります。
このような傾聴は、すぐに答えが見つかるとは限らないし、何回も会い何年もかけることが必要かもしれません。一度に長い時間をかければよいというものでもありません。定期的に会って聴くことにも意味があります。気長に聴いていくことが大切です。そんな傾聴ができているときには、意味を見つけられていないときであっても、相手の気持ちは癒されているものです。答えをみつけようという希望がそこにはあるのですから。
東洋経済オンラインに加藤先生による「市民のための患者学」2週間ごとの連載スタート!
http://toyokeizai.net/articles/-/143366
患者の力: 患者学で見つけた医療の新しい姿
出版社: 春秋社
「患者には力がある!」 毎日を健康に生きるために、そのためにも、真の患者中心の医療を実現するために、いま必要なこととは。
酒井ひとみさんとの出会いは、私の相談員がFacebookでひとみさんと繋がった事から始まります。2017年5月12日東京スカイツリーで初対面。
初めて会う、ひとみさんは大きな車椅子に乗り人工呼吸器を装着して身体を動かす事や表情を変える事がほとんど出来ないALS患者でした。ですがヘルパーとの会話はスムーズに行われていた、口文字と言う会話法を用いたコミュニケーション方法でした。
年齢も近くて色々と共通点が多く、初対面でしたがとても親しみを持てる素敵な方でした。病気ではあるが、ヘルパーの手を借りる事ができれば今残された機能を最大限使って色んな事をやれるし、精一 杯頑張って生きていける事が、この出会いを通じて確認出来ました。
また、現在急速に進んでいるALS研究を詳しく知る事により、ほんのわずかな希望が持てました。
そして、告知を受けて始めは絶望の中で闘病生活を送る、そんな時に情報を得られるか得られないかで、生き方に大きな違いが生じると思いました。
難病がある方や家族の方、サポートする方々で日常感じている悲しみ、辛さ、笑い、皮肉や優しさなどを短歌・川柳にしてご応募ください。
採用の方には寄稿料として千円相当のクオカードを進呈します。詳細は事務局までお気軽にお問い合せください。
難病川柳
帰宅時に 季節楽しむ 夏の夜
作:亀千代さん(全身性エリテマトーデス)
紫外線のない涼しい夜の帰宅時に夏の星座や虫の声で季節を感じ楽しんでいます。
難病短歌
安心だ 難病更新 行って来た 気になることは 自己負担額
作:上里栄子さん(天疱瘡)
受給者証が手元に届くまでドキドキ万札にならないでーと祈る。
タイムトラベル、タイムスリップ、など過去や未来を時間移動するオススメ4作品。
「もしも昨日が選べたら」
時間制御できるリモコンが、もし手に入ったら?
「きみが僕を見つけた日」
勝手にタイムトラベルしてしまう体質の主人公。自分の意思で、運命を変えられるのか?
「ミッション:8ミニッツ」
ある任務により、何度も繰り返される8分間…。何の任務で、最後はどうなるのか…。
「プライマー」
偶然タイムマシンを作ってしまった2人が運命を狂わされていく…。観終わったあと、不思議な感覚に陥るかもしれません。
★渡久地 優子{進行性骨化性線維異形成症(FOP)}★
・・・カラーセラピーやパワーストーンも好きで、時々、ネットで見てます。
去る6月29日(土)全国膠原病友の会沖縄県支部総会&医療講演会が開催されました。
総会は会員数80名に対し、委任状と併せて当日参加会員で過半数を超え、議題は滞りなく承認・採択されました。また、医療講演会では豊見城中央病院リウマチ・膠原病内科上地英司先生による「膠原病治療~医師からの目線、患者からの目線~」というテーマでお話くださいました。
タイトルにもありますように、医療には2つの特徴があり
(1)医療は不確実
(2)医療情報の非対称性
と、この2つを踏まえた上で、患者さんはともすればお薬の選択(このお薬はどうですか?このお薬は副作用が怖いから嫌)に重きを起きがちだが、医師の立場からすると、お薬の選択も勿論大切ですが、それと共に大事な事は治療の戦略であること。そのことを常に考え、日々患者さんに向き合っていらっしゃることを知ることが出来ました。タイトルが魅力的だと参加者も多くなることも今回知ることが出来ました。
一足早く梅雨明けの沖縄は連日の猛暑続きですが、そろそろ全国的に梅雨が明け、日に日に暑さが増してきた頃かと思います。ここ数年、全国各地で一番南の沖縄より気温の高い地域が増え、40度近くになるところも散見されます。日中の強い日差しを避け、小まめな水分補給で体調管理を心がけましょう。
さて今月の「表紙は語る」は慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の池崎さんに体験談をお寄せ頂きました。
自分の思いを伝える術がなかった発症から高校生活を経て、自分の体、人生の手綱を握っているのはあくまで自分であり、自立とは何でも自分で出来ることではなく、依存先をうまく増やすことだと学んだ大学時代。そして卒業後、難病患者だけでなく、すべての人が生きやすい社会を皆と一緒につくっていくことをライフワークとして幅広く活躍されている様子が活き活きと語られ、強い共感を覚えました。
出来なくなったことを嘆かず、出来ないことは出来る人に頼みながらも、自分の夢、思いを叶える。自分が主人公として納得できる人生を歩みたいですね。
文 仲村明
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