最終更新日:2021年05月05日
川口 美怜(かわぐち みさと)さん
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
私の名前は川口美怜と申します。4年前にも一度書かせていただきました。今回の内容は、前回から今の状況を伝えたいと思います。
私はALSを発症して約10年になります。この4年、私の病気の進行は急速に進み、眼が動かしにくくなりました。今度は眼の動きに問題が見られるようになり、文字盤を読み取ることができなくなってきました。
私にとっては辛くて前を向くことができなかったのですが、wacciというバンドに出会い、勇気をもらいました。メンバーの橋口洋平さんの作詞作曲した「大丈夫」を聴き、励まされ前を向くことができました。wacciとはライブ後のサイン会や握手会に参加しメンバーと会話をしています。想いを事前に読み取ってもらい、伝達を両親やヘルパーさんにしてもらいます。伝えたいことが沢山あるのに伝えきれないのがとても悔しいですが、メンバーが沢山話してくれるのでとても嬉しいです。そして私の手を橋口さんが握って写真を撮ってくれた時は興奮して眠れませんでした。wacciは私にとって、なくてはならない存在です。
wacciの話はここまでにして、続いては私の活動をお伝えします。私は2年前の6月にフジテレビで放送されている「ザ・ノンフィクション」に出演しました。(関東地区のみ放映)起用のきっかけは主治医の先生です。先生の紹介を通して、(知り合いの)漫画家をされている「たちばないさぎさん」との出会いでした。たちばなさんからフリーディレクターの方をさらに紹介して頂き2016年6月から3年に及ぶ取材を映像化する事でメディアに載る話となりました。
他にも講演活動を行いました。難病コミュニケーション支援講座や大学の看護学部への学生に向けてALSについての講義です。その他、執筆活動及びブログ作成にも力を入れています。
私の目標及び夢は次の三つです。
(1)仕事がしたい
(2)情報発信をしたい
(3)患者活動に力を入れたい
気になるのはこのままコミュニケーションが取れなくなったらどうしようかと思っていることです。私はもっと話したいのですが、ゆっくりの動きで更に目が疲れることが多いので、留意しないといけません。ヘルパーの皆様には、各自で文字盤を工夫してもらっています。私の両親も私のコミュニケーションが取れなくなることをとても心配していて、私も焦りを感じています。いつになればコミュニケーションの取り方が安定するのか不安です。
将来、胃ろうするだけの人生を歩みたくはありません。なので、諦めないで文字盤でのコミュニケーションを取り続けてほしいです。私の様にALS患者は誰かに気付いてもらえなければ自分の力で色々な思いを発信する事が出来ません。何らかの形でコミュニケーションを取る手段をみつけなければ私には自分の気持ちを伝えることが難しいです。
そのような不安ばかりの中で、今の私の強い味方は作業療法士や理学療法士の学生さんです。リハビリの一環として文字を読み取る練習をお願いしています。学生さんに対する思いとしては、いつまでも文字盤を取り続けて欲しいです。病気だからといって特別接するのではなく普通に接して欲しいと思います。
このような読み取り活動を通して、私の考え・思いを伝える事が出来るので学生さんには感謝の気持ちで一杯です。今までも又これからもベストパートナーとして学生さんと一緒に前を向いて歩んで行きたいと思います。
アンビシャスに娘が寄稿してから4年近く経ち、年月の速さを改めて感じています。
当時は気管切開手術後初めての遠出の外出であり、飛行機を利用しての長旅という事で我々も不安の中での旅行でした。沖縄では、一般社団法人KUKURUさんを始め色々な方々の御支援・御協力を頂き数々のハプニングもありましたが、無事娘の念願であった沖縄の方々との出会いが叶いとても良い思い出になりました。
娘の病気は進行性の為、この4年間で身体的能力及びコミュニケーション手段が大きく変化しました。本人も述べている様に我々家族もコミュニケーションを取る事が難しくなってきています。この様な状況の中でも、本人はALSの病気について多くの方に知って頂きたい思いで執筆活動や講演活動等を通して情報発信を行っています。
我々家族も多くの支援者の方々と共に娘を応援していく所存です。 願わくば少しでも早く治療薬が開発され症状が改善していき、最新の技術で、例えば脳波を利用したコミュニケーション等が実用化になればと思っています
私共の今の夢は、娘が以前寄稿した「挑戦したいこと」を実現する事です。 沖縄での講演活動をする事およびヨーロッパへの旅行です。少しでもこの夢に向かって歩み続けていきたいと思っています。
3月4日 (木曜日)八重山保健所主催で難病講演会・支援者向けの研修会の講師として参加しました。
コロナ禍でリアル参加の講演会はなかなか厳しい状況ですが、感染予防対策を講じた上での開催に約20名の参加がありました。
神経難病で進行すると自分の意志を伝える手段が厳しくなってきます。それを支えるには知識と経験が大切になってきます。日本ALS協会沖縄県支部からも2名の方が講師として招かれ、当事者の立場から病気の受容や機器導入のタイミングなどのお話がありました。
研修会ではALS患者の家族やその支援者から、「コミュニケーションの取り方もたくさんの方法があると知ることが出来て良かった」「知識をもつことは大事だと思った」「100名いたら100通りの症状があることが分かった」などの感想が聞かれ大変好評でした。研修会終了後もそれぞれに情報交換をされていました。 研修会での学びが在宅療養者支援に活かされQOLの向上につながっていくと感じています。
令和2年度最後となる2つの医療相談会を実施しました。神経系、膠原病系とも相談希望者が多くキャンセル待ちもあったため、今年度2回目の実施となりました。
パーキンソン病や重症筋無力症等の神経系医療相談会を3月 12日 (金)沖縄病院の渡嘉敷崇先生に、膠原病系医療相談会を3月26日(金)首里城下町クリニックの比嘉 啓先生と、両先生のご協力をいただきそれぞれに開催しました。
治療や症状の進行に関するご相談、また今年度は新型コロナに関する質問も多くありました。お一人30分間じっくりとお話をすることができ、参加された方からは「治療や今後に対する不安が少し軽くなりました。」「参加して本当に良かったです。」といった感想がありました。先生方にはお忙しい中ご対応いただき、心より感謝申し上げます。
令和3年度も各疾患の専門医の先生方のご協力をいただき、医療相談会を開催したいと思っています。詳細につきましては日程が決まり次第、アンビシャスホームページおよび会報誌に載せる予定です。参加ご希望の方はぜひご確認ください。
沖縄国際大学の上田幸彦教授のご協力を頂き、今年度で5回目となる「こころとからだのセルフコントロール」セミナーを、今年1月から全3回のコースで開催しました。
最終回となる第3回目のセミナーを3月27日(土)に行い、終了後には上田教授から参加者の方々へ修了証が送られました。本セミナーは個別指導が行き渡りやすくするため参加者4名に絞り、気になることや分からない事があった場合などは、先生に気軽に質問できる雰囲気となっております。また、先生の講義やディスカッションを通して「ストレスによる心と身体の影響」や「マインドフルネス瞑想を用いたストレス対処法の実践」などを学んでいきます。
参加者からは「一生使える知識を得ることができました」「自分の考えの偏りに気づくことができ、これからは周りと積極的にコミュニケーションをとっていきたい」といった感想が聞かれ、例年同様とても満足度の高いセミナーとなりました。
上田先生ありがとうございました。
臨床心理士 鎌田 依里(かまだ えり)
皆さんは、電話相談をする際に自分の名前を名乗っていますか。本名でないと相談できない場所もあれば、匿名や仮名で相談をすることが可能な場所もありますが、特に電話相談では、匿名や仮名での相談を希望される場合もあります。
自分の名前とは不思議なもので、名前を名乗ったり聞いたりすると、こころには責任が生じてきます。
自分が相談をする場合に、相手に自分の名前を言える時には、自分が相談をした問題を自分自身で引き受けようとする覚悟があり、自分の悩みや自分自身の存在を肯定的に捉えている場合が多くあります。つまり、自分の存在や生き方に、ある意味では、自信をもっていると言ってよいでしょう。自分の名前を相談する場で出すことができる方は、心理療法の効果も出やすいとも言えます。
一方、匿名での相談をする場合には、自分の存在や具体的な状況を明らかにしないまま相談ができるというメリットはあります。しかし、デメリットとして、自分の問題を自分自身の心でしっかりと受け止める覚悟ができにくかったり、逃げに転じてしまったり、心理療法としての効果が薄かったりする場合もあります。
電話相談を受ける場合でも、相談を受ける自分の名前を相手に名乗ると、相手の相談をしっかりと聴くのだ、という覚悟が無意識に沸き上がります。責任が生まれるといってもよいでしょう。
相手から相談を受ける際には「相手がとても大切に想っていて何とかしたいと思っている事柄を相談してきている」という、基本的な認識を忘れないようにしましょう。相談する人も自分の抱えている問題に責任をもち、相談される人も真剣に相談に乗り続ける姿勢の大切さを改めて考えてみてもよいかもしれません。
著:照喜名通
「ある日、病院で検査をうけたら難病と言われた。突然のことで頭が真っ白になり、先生の言っていることが理解できないでいた。残っている言葉は、原因が判らず、完治する治療方法が無いということだけだった。」というのが、多くの難病患者や家族の体験かと思います。
予期しない突然の出来事で不意打ちをくらったような衝撃体験をし、そのことに対処できない、何かの間違いだと思いたくても、どうしようもない場合には、過度なストレス状態になり、色々な反応が私たちの感情と行動に現れます。それは、難病だけに限らず、交通事故や人事異動、家族関係、災害など日々の生活の中でも現れます。
今は新型コロナウイルスでも似たようなことが起きています。よし闘うぞ、いや逃げよう、まったくコロナのせいで、どう生活すればよいのか不安、将来が見通せず怖いなどといったことがおきています。まさしく今、世界中が過度なストレスにさらされています。自分は大丈夫と思い込みストレスに気づかないから困ります。医療現場で働く方々、保健所や行政の方々はより強い緊張にさらされ、余計に対策を講じないと大変なことになるのだろうと心配になります。難病でも100名いたら100通りの症状と悩みがあるように、個別性を大切にしていきたいです。
慶應義塾大学 名誉教授 加藤 眞三著
患者中心の医療では、患者さんのものの見え方、とらえ方が1人1人違うということが前提となります。つまり、人々に多様性があることを、医療を提供する側も提供される側も十分に理解していなければ実現することはできないのです。今回は、多様性について考えてみます。
最近、SDGsという言葉をよく耳にするのではないでしょうか?「SDGs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2015年に国連で決められた、国際社会共通の目標として掲げられたものです。17の項目があり、それぞれの国によって達成目標は異なりますが、その根底にある思想は、多様性を受け容れる社会にしようということです。
さて、多様性を受け容れようといわれて、頭では理解をしていても、本当は多様性があることなど認めたくない人も多いのではないでしょうか?そんな時、私は青と黒のドレスの写真を見てもらうことにしています。この写真は、2015年頃にネット上で話題になったものです。
何人かのグループの中でみせると、このドレスが、青と黒に見える人と、白と金色に見える人に分かれます。私には青と黒にしか見えないのですが、白と金色に見える人にとっては青と黒に見えるといわれて驚くことになります。お互いに、ええー本当にそう見えるのと狐につままれたような顔をするのです。
なぜ、人によってこのような差が出てしまうのでしょうか?それは、網膜で見た像の色を脳で認識するまでの間に補正が働いているからなのです。その補正のやり方や度合いがそれぞれの人の生育歴によって異なるからと考えられています。具体的には、逆光で見ているととらえる人と順光で見ているととらえる人によって異なるパターンの色の縞として認識してしまうのです。
これは色の識別に関する一つの単純な例ですが、同様のことは、色々な状況で起きます。例えば、あるものを失うという事件がおきた時に、それを不幸(悲しい出来事)ととらえる人と希望(これから何かを変えられる)ととらえる人がいるのです。あるいは、外出時にみた天気予報が降雨確率30%と告げたときに、傘を持っていく人と、それなら傘は要らないと、持っていかない人がいます。それ位、人のとらえ方と行動の仕方は異なるのです。
医療においても、患者さんの1 人1人によって、同じ病気であってもとらえ方やそれに対する対処の仕方は異なってきます。それは、その人の育った時代、土地、環境、教育、得ている知識、今までに出くわした事件など、様々な要因が異なるからです。
だからこそ、その人にあった医療を選ぶ、あるいは療養生活を送るためには、患者さんの側から自分の言葉を発信しなければならないのです。もちろん医療者の側にもそれを聴こうとする態度が必要です。それは、万人にあう一つの解答があるわけではないためであり、その人に合う解答をみつけ出すために、対話が必要となるからです。
東洋経済オンラインに加藤先生による「市民のための患者学」連載配信中!
http://toyokeizai.net/articles/-/143366
加藤先生の最新書籍:肝臓専門医が教える病気になる飲み方、ならない飲み方
出版社:ビジネス社
アンビシャスでは2021年5月よりオンライン相談を開始します。これまで対面式で行っていた相談に加え、オンラインでの相談を導入することで新型コロナ感染症の予防や対面での相談が難しい皆様へのサービス拡大を目指しています。
パソコン(またはスマートフォン)とメールアドレスを準備していただければどなたでも可能です。
オンラインの経験がない方でも接続方法からお伝えします。なお、面談は無料ですが通信費は相談者様ご負担となります。完全予約制、相談は1回につき約30分程度とさせていただきます。
これまで事務所が遠くて面談にこれなかった方や移動の際の人混みが心配な方、ぜひ一度オンラインで面談をうけてみませんか! 電話かメールにていつでもご相談ください。
お問合せ先
電話:098-951-0567
メール:soudan@ambitious.or.jp
沖縄県難病相談支援センター(認定NPO法人アンビシャス) 〒900-0032 那覇市牧志3-24-29 グレイスハイム喜納2 1階
*メールでお問合せ後、数日以内にアンビシャスよりご連絡させていただきます。
尚、迷惑メール設定等によりアンビシャスからの返信が届かない場合もあります。
送信から1週間経過しても返信が無い場合には、お電話をくださいます様お願い致します。
沖縄県薬剤師会 吉田 典子
日本では、ベンゾジアゼピン系薬に分類される睡眠薬が多く処方され、効果的で比較的安全性の高いお薬とされてきました。しかしながら、長期服用によりなかなか薬がやめられないといった症状や認知機能や記憶力の低下も指摘されています。特に睡眠薬を処方されることの多い高齢の方では副作用が出やすく、ふらつきや転倒、骨折、せん妄等の症状が報告されています。2017年3月厚生労働省の外郭団体独立行政法人医薬品医療機器総合機構は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬について、認められた用量であっても長期服用で依存性が生じる可能性がある(常用量依存)と注意を促しています。
また、数年前より1回に処方してもらえる薬剤の日数にも制限が加えられました。最近は非ベンゾジアゼピン系で依存性の少ない新しいタイプの睡眠薬も発売されています。依存症を心配して急に中断すると脱力感や震え等が出る事もありますので、主治医とよく相談しましょう。加えて、自分自身の生活習慣(運動不足、長過ぎる昼寝、カフェインやタバコの過剰摂取、寝酒)を見直してみることも大切です。
また蚊の季節がやって来ましたね。
沖縄では年中蚊がいるような気もしますが、やはり温かくなると蚊の勢いや数は劇的に増すように思います。
私のような、自分では身動きの取れない者におきましては特に蚊は大敵です。蚊が周りを飛んでいるだけでも結構な恐怖です。 なぜかと言うと、蚊が顔にとまり血を吸おうとも私にはどうする事も出来ず、ただヘルパーに気づいてもらえるまで視線を送り続けて、ようやく気付いてもらえてから口文字で「顔に蚊がいる」と伝えて、蚊を仕留めてもらいます。
まあその頃には、蚊にたらふく血を吸われております。そしてその後の痒みは言うまでもなく、痒さにも耐えなくてはいけません。
さてと、蚊よけのグッズを準備をして、夏を楽しみたいと思います。
1)とんび TBS系列ドラマ
昭和の親父が、男手ひとつで息子を育てて行く、人情的で笑いと涙のある素敵なドラマ。佐藤健、内野聖陽が親子役として共演。
2)夜のせんせい TBS系列ドラマ
年齢もバラバラの生徒が、一つになっていく定時制高校の話で、先生役に観月ありさ。面白くもあり、こういう学校イイナと思える。
3)あの日のオルガン
太平洋戦争中の疎開をさせたい保母たち、子供を離したくない親たち、空襲の不安…。「疎開保育園」の実話の映画化。
★渡久地 優子{進行性骨化性線維異形成症(FOP)}★
・・・カラーセラピーやパワーストーンも好きで、時々、ネットで見てます。
5月の連休を前に全国各地で新型コロナウイルスの感染が止まず、多くの地域で対面での交流会が中止となっています。しかし人間は工夫するもの、困難な状況が長引けばそこに対応したイノベーションが生まれます。
昨今多くなった在宅勤務やオンライン会議・ミーティングをはじめ医療講演会や診療、患者会の運営もオンラインが増えてきました。都会でも離島でもインフラさえ整えれば条件は一緒です。ITに疎いと敬遠しがちですが、情報を得ようと思うなら詳しい人の助けを借りてでもトライすべきです。
アンビシャスでも今月よりオンライン相談を開始します。オンライン環境さえ整っていれば交通費も移動時間もいりません。是非お試しください。
さて今月の「表紙は語る」はALSの川口美怜さんにその思いを語っていただきました。川口さんには4年前にもご寄稿頂きましたが、症状の進行で思いを伝えるのに以前より時間がかかり、もどかしいお気持ちがひしひしと伝わってきます。しかしそのような状況の中、3つの目標を掲げ、思いを発信し続ける姿にただ、ただ頭が下がります。
文 仲村明
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